針を刺すだけで治療できる ラジオ波焼灼術
世界的にがんの死因の3番目に位置する肝臓がん。日本でも男性では3番目、女性では5番目に死者数の多いがんだ。年間約3万人が新たに肝臓がんという診断を受けている。
肝臓がんの原因は大多数がB型およびC型肝炎ウイルスだ。患者の約7割がウイルスの感染者といわれている。残りの1割は常習飲酒、残りの2割は脂肪肝や糖尿病、肥満、高血圧などの生活習慣病を患っている人が発症している。かつては肝炎ウイルス感染者によるがん発症が主だったため危険性をある程度抑制することが可能だったが、近年は生活習慣病などによるがん発症が増えてきているため、誰にでも危険性があるがんと認識されるようになってきている。
現在行われている肝臓がんの治療は、手術、経皮的局所療法(エタノール注入療法やラジオ波焼灼術など)、肝動脈塞栓の3つが3本柱になっている。
「このうちラジオ波焼灼術は、針を肝臓に刺し、腫瘍を焼く方法です。イタリアで開発され、日本では国内で最も早い1999年に導入しました」と話すのは手稲溪仁会病院消化器病センター副部長の辻邦彦医師だ。
負担を軽減しながら、手術と同等の実績
ラジオ波焼灼術(RFA)は、超音波装置(エコー)の画像でがんを見ながら体外から細い針を刺し、100度前後の熱で焼いてがん細胞を壊死させる方法だ。局所麻酔でおこなうため治療時間は約30分。身体への負担が少ないため、最短で2泊3日程度の入院で済む。
ウイルスに感染すると数十年をかけて肝細胞が侵され、やがて肝炎、肝硬変、そしてがんを発症する。そのため肝臓はがんを発症しやすくなっており、ひとつのがん細胞を治療しても別の場所に発生する傾向がある。つまり再発性が高いのが肝臓がんの特徴なのだ。そのためラジオ波焼灼術は再発のたびに負担なく治療できるという利点も持ち合わせている。
また肝臓がん患者は高齢化しており、開腹手術に耐えられない患者も多い。そこで有効な治療法としてラジオ波焼灼術が用いられているのだ。
医師個人の実績に病院の総合力は心強い
治療実績が向上しているのは、設備の充実も挙げられる。
同院ではナビゲーション・システムを搭載したエコー装置を活用。コンピュータ断層撮影(CT)や、核磁気共鳴画像法(MRI)で発見したがんの画像をエコー装置の画像に連動させることができる。
ただ、「ラジオ波焼灼術は適応や工夫、合併症や治療効果判定など気をつけなければならない点が多く、正確な知識や技術、経験が必要となってきます」と辻医師。現在までに2000例を誇る手稲溪仁会病院。もちろんラジオ波焼灼術のみならず、手術やカテーテル治療といった実績も多い。